寛容性の生起プロセスについて、被害者が自発的に用いる認知的方略(中立的視点獲得方略、加害者視点獲得方略、寛容利益強調方略)に焦点を当てて検討を行った。中立的視点獲得方略は中立的立場から被害経験を客観的に分析し直す認知的作業、加害者視点獲得方略は加害者の視点にたって加害者の感情を推測する認知的作業、寛容利益強調方略は寛容によってもたらされる利益を認識しなおす認知的作業のことである。これらの3方略が寛容性を促すかどうかを質問紙調査を行い検討した。その結果、加害者視点獲得方略や寛容利益強調方略は寛容性を促したが、中立的視点獲得方略は寛容性と関連を示さなかった。この結果に関して、寛容性の自発性という観点から考察を行った。
pp. 97-108