酸化チタン ナノチューブ薄膜(TiO2 NT)の光触媒研究において、このTiO2NTが殺菌活性を有すること、そして、その活性本体は光触媒能によって産生される活性酸素種(ヒドロキシラジカル)であることを、常在菌(大腸菌と黄色ブドウ球菌)をモデル微生物として、電子スピン共鳴法、蛍光光度法、顕微鏡観察によって実証した。また、TiO2NTへの光照射により産生する活性酸素量の経時的変化と細菌の生存率との関係性について、この殺菌活性が時間依存性であることを再現する速度論モデルを提案した。現在、医療・介護現場では塩素消毒等の薬液による消毒法が主な方法であり、従事者、利用者共に負担が大きい点が課題である。この研究成果は、薬剤を使用せず光と酸化チタンを用いた安全な殺菌法として有効であり、科学的な根拠に基づいた社会実装を向けた研究報告であり、今後大きく発展する技術として価値がある。また、酸化チタンナノチューブ薄膜というユニークな材料が、機能性材料として多くの分野において応用可能であることを実証するものである。以上より、本研究の意義や成果を世界中の多くの分野で周知していただくために、Langmuirというアメリカ化学会(American Chemical Society)が発行する表面科学分野のジャーナルに投稿した。)
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Masato Yamaguchi, Hiroyuki Abe, Teng Ma, Daisuke Tadaki, Ayumi Hirano-Iwata, Hiroyasu Kanetaka, Yoshihiko Watanabe, and Michio Niwano