湖沼汚染の原因の1つである富栄養化によるアオコの大繁殖は、国内では霞ヶ浦、手賀沼、津久井湖、諏訪湖等が知られている(アオコ現象を形成する生物はシアノバクテリアという)。アオコ形成シアノバクテリアの大部分が肝臓毒や麻痺性毒を産生するため、ダム湖や水源となる湖において、国内のみならず海外においても公衆衛生上の問題となっている。当時、国立環境研究所が保有するシアノバクテリア培養株に赤血球凝集(インフルエンザウイルスや病原細菌などが宿主へ付着する際の感染初期に関わるタンパク質の性状1つ)の生理活性が報告されたため、国立環境研究所の培養株と併せて、実際の天然のアオコ(霞ヶ浦、手賀沼、津久井湖)を採取し、赤血球凝集活性を調査し、その活性本態であると推測されるレクチン(糖鎖認識タンパク質:微生物の感染初期に関わったり、動植物の生体防御に関わったりするなど広く生物界で機能性を発揮するタンパク質)の種間分布やその性情を調査した。その結果、推測通り、天然のアオコに赤血球凝集素の存在を認め、培養株にもその活性を認め、更にその活性本態が糖鎖認識タンパク質であるレクチンであることを認め、天然のアオコを形成するシアノバクテリアに存在することを世界で初めて報告した。今後、このレクチンの物理化学的特性や生理機能を始め、有毒株との関連性、大増殖するメカニズムとの関連性など調査研究する必要性が高まり、研究を継続することが決まった。以上の研究成果をユネスコの有毒藻類に関する国際会議で報告した。
pp.569-572
Sakamoto S, Yamaguchi M, Watanabe MF, Watanabe M, Kamiya H