これまで酸化チタン薄膜の光触媒能を活用した殺菌効果の研究は酸化チタン粉末をガラスなどの固体基板上に
塗布して形成した薄膜を利用してきている。ところが、このように形成した薄膜は接着剤等と混ぜ合わせるため
に十分な光触媒能が引き出せないなどの問題がある。そこで、本研究では陽極酸化法で形成される酸化チタンナ
ノチューブ薄膜(TiO2 NT)を用い、その薄膜の光触媒能による殺菌効果を詳細に調べることを目的とした。
今回、TiO2 NT 薄膜の光触媒機能による殺菌作用について、モデル細菌として大腸菌細胞を用いて調べたので、
その結果を報告した。結果:0.13 mW/cm2の強度の近紫外線を約3時間照射すると、大腸菌細胞が完全に死滅した。一方、暗条件下またはガラス板上では大腸菌は死滅しなかったため、TiO2 NT 薄膜の光触媒能による殺菌作用が確認できた。TiO2NTの光照射により時間依存的に活性酸素が発生すること、活性酸素に大腸菌が死滅することを確認した。金属顕微鏡による観察で大腸菌の細胞壁等の破壊によって死滅する様子が観察できた。
p403
山口 政人, 阿部 宏之, 馬 騰, 平野 愛弓, 庭野 道夫