「魔の山「追想の形式」」
本論文ではトーマス・マンの小説「魔の山」における語り手の役割に着目し、この小説の形式に関する考察を行った。トーマス・マンの時代は小説という形式が危機を迎えた時代であり、彼もそれに正面から対峙した。それは19世紀のリアリズム文学が内部から崩壊してゆく時代であり、マンの叙事詩的心情からすれば容認できない状況であった。この小説ではその形式の中に彼の時代に対する態度が表明されていることを提示し、その意義を論じた。
東京都立大学大学院人文科学研究科