「伊勢物語の翁とその語り」
伊勢物語に登場する翁には、二つの役割が課せられている。一つは語り手としての翁であり、もう一つは作中人物としての翁である。前者についてはたびたび言及されているが、後者については全くなされていない。本稿では、後者の翁に視点を据えて、作中人物翁が、業平の持つ歴史的な属性――挫折者――を明確に表現する役割を担っていたことを論じたもの。
むらさき 第22輯