『古記録と日記』
更級日記に先行する日記作品はすべて自らの存在意義を明確に謳いあげている。凡庸な人生を生きた作者・孝標女が先行作品に伍して自己の存在意義を主張しようとすれば、凡庸であることを徹底化する以外に道は残されていなかった。有能な父を凡父とする虚構や、冒頭の対極的な表現のありようは、そうした存在意義を証明する為に考え出された手法であった。「更級日記」の項担当(5頁)
思文閣